貸金業の業務の外部委託と監督指針

貸金業の業務の外部委託と監督指針について、委託元から委託先・再委託先へすべき措置、監督当局が貸金業者(委託元)を監督すべき項目について説明します。

貸金業者が外部へ業務を委託する際の措置

個人の資金需要者等に関する情報の安全管理措置等【貸金業法施行規則 第10条の2】

貸金業者は、その取り扱う個人である資金需要者等に関する情報の安全管理、従業者の監督、及び当該情報の取扱いを委託する場合には、その委託先の監督について、当該情報の漏えい、滅失又はき損の防止を図るために、必要かつ適切な措置を講じなければならない。

委託業務の的確な遂行を確保するための措置【貸金業法施行規則 第10条の5】

貸金業者は、業務を第三者に委託する場合には、次の措置を講じなければならない。

一  当該業務を的確、公正かつ効率的に遂行することができる能力を有する者に委託するための措置

二  当該業務の委託を受けた者(受託者)における業務の状況を、定期的、又は必要に応じて確認すること等により、受託者が業務を的確に遂行しているかを検証、必要に応じ改善させる等、受託者に対する必要かつ適切な監督等を行うための措置

三  受託者が行う業務に係る資金需要者等からの苦情を、適切かつ迅速に処理するために必要な措置

四  受託者が業務を適切に行うことができない事態が生じた場合には、他の適切な第三者に業務を速やかに委託する等、業務に係る資金需要者等の保護に支障が生じること等を防止するための措置

五  貸金業者の業務の健全かつ適切な運営を確保し、業務に係る資金需要者等の保護を図るため必要がある場合には、業務の委託に係る契約の変更、又は解除をする等の必要な措置を講ずるための措置

貸金業者の外部委託業務の監督指針

外部委託【監督指針 Ⅱ-2-3】

貸金業者が外部委託するに際し、貸金業者の監督に当たっては、以下の点に留意するものとする。

主な着眼点

①委託先の選定基準や、外部委託リスクが顕在化(はっきりしてきた)したときの対応などを規定した社内規則等を定め、役職員が社内規則等に基づき、適切な取扱いを行うよう、社内研修等により周知徹底を図っているか。

②委託先における法令等遵守(じゅんしゅ)態勢の整備について、必要な指示を行うなど、適切な措置が確保されているか。
又、外部委託を行うことによって、検査や報告命令、記録の提出など、監督当局に対する義務の履行等を妨げないような措置が講じられているか。

③委託契約によっても、貸金業者と資金需要者等との間の権利義務関係に変更がなく、資金需要者等に対しては、貸金業者自身が業務を行ったものと同様の権利が確保されていることが明らかとなっているか。
※外部委託には、形式上、外部委託契約が結ばれていなくとも、その実態において外部委託と同視しうる場合や、外部委託された業務等が、海外で行われる場合も含む。

④委託業務に関して、契約どおりサービスの提供が受けられない場合、貸金業者は顧客利便に支障が生じることを未然に防止するための態勢を整備しているか。

⑤委託先における目的外使用の禁止も含めて、顧客等に関する情報管理が整備されており、委託先に守秘義務が課せられているか

⑥個人である資金需要者等に関する情報の取扱いを委託する場合には、委託先の監督について、情報の漏えい、滅失(めっしつ:滅んでなくなる事)、又はき損(毀損:物を壊す事)の防止を図るために必要かつ適切な措置として、保護法ガイドライン第12条(金融分野における個人情報保護に関するガイドライン第12条(委託先の監督)(法第22条(漏えい事案等への対応)(基本方針関連))の規定に基づく措置及び実務指針 III(金融分野における個人情報保護に関するガイドライン第12条に定める「委託先の監督」について)の規定に基づく措置が講じられているか

⑦外部委託先の管理について、責任部署を明確化し、外部委託先における業務の実施状況を定期的、又は必要に応じてモニタリングする等、外部委託先において顧客等に関する情報管理が適切に行われていることを確認しているか

⑧委託先で漏えい事故等が発生した場合に、適切な対応がなされ、速やかに委託元に報告される体制になっていることを確認しているか。

⑨委託先による顧客等に関する情報へのアクセス権限について、委託業務の内容に応じて必要な範囲内に制限しているか。
その上で、委託先においてアクセス権限が付与される役職員、及びその権限の範囲が特定されていることを確認しているか。
さらに、アクセス権限を付与された本人以外が当該権限を使用すること等を防止するため、委託先において定期的、又は随時に、利用状況の確認(権限が付与された本人と、実際の利用者との突合(突き合わせ)を含む。)が行われている等、アクセス管理の徹底が図られていることを確認しているか。

⑩二段階以上の委託が行われた場合には、委託先が再委託先等の事業者に対して、十分な監督を行っているかについて確認しているか。
また、必要に応じ、再委託先等の事業者に対して、貸金業者(委託元)による直接の監督を行っているか。

⑪委託業務に関する苦情等について、資金需要者等から貸金業者(委託元)への直接の連絡体制を設けるなど、適切な苦情相談態勢が整備されているか。

監督手法・対応

検査の指摘事項に対するフォローアップや、苦情等に係る報告徴収(報告を集める)等により、貸金業者の業務の外部委託に係る内部管理態勢、貸金業者の外部委託先の業務運営態勢、若しくは業務運営の適切性に問題があると認められる場合には、貸金業者や外部委託先に対するヒアリングを実施し、必要に応じて法第24条の6の10(報告徴収及び立入検査) に基づき報告書を徴収することにより、貸金業者における自主的な業務改善状況を把握することとする。

更に、資金需要者等の利益の保護の観点から重大な問題があると認められるときには、貸金業者に対して、法第24条の6の3(業務改善命令) の規定に基づく業務改善命令を発出することとする。
また、重大・悪質な法令違反行為が認められるときには、法第24条の6の4(監督上の処分)に基づく業務停止命令等の発出を検討するものとする。 行政処分を行う際に留意する事項は III -5-1(行政処分の基準)による)。

※ヒアリングは、委託者である貸金業者を通じて事実関係等を把握することを基本とするが、事案の緊急性や重大性等を踏まえ、必要に応じ、外部委託先からのヒアリングを並行して行うことを検討することとする。
※外部委託先に対してヒアリングを実施するに際しては、必要に応じ、委託者である貸金業者の同席を求めるものとする。

参考法令条文

貸金業法施行規則(個人の資金需要者等に関する情報の安全管理措置等)第10条の2

貸金業者は、その取り扱う個人である資金需要者等に関する情報の安全管理、従業者の監督及び当該情報の取扱いを委託する場合には、その委託先の監督について、当該情報の漏えい、滅失又はき損の防止を図るために必要かつ適切な措置を講じなければならない。

貸金業法施行規則(委託業務の的確な遂行を確保するための措置)第10条の5

貸金業者は、貸金業の業務を第三者に委託する場合には、当該業務の内容に応じ、次に掲げる措置を講じなければならない。
一  当該業務を的確、公正かつ効率的に遂行することができる能力を有する者に委託するための措置
二  当該業務の委託を受けた者(以下この条において「受託者」という。)における当該業務の実施状況を、定期的に又は必要に応じて確認すること等により、受託者が当該業務を的確に遂行しているかを検証し、必要に応じ改善させる等、受託者に対する必要かつ適切な監督等を行うための措置
三  受託者が行う当該業務に係る資金需要者等からの苦情を適切かつ迅速に処理するために必要な措置
四  受託者が当該業務を適切に行うことができない事態が生じた場合には、他の適切な第三者に当該業務を速やかに委託する等、当該業務に係る資金需要者等の保護に支障が生じること等を防止するための措置
五  貸金業者の業務の健全かつ適切な運営を確保し、当該業務に係る資金需要者等の保護を図るため必要がある場合には、当該業務の委託に係る契約の変更又は解除をする等の必要な措置を講ずるための措置

監督指針(外部委託)Ⅱ-2-3

貸金業者が貸金業の業務を第三者に委託(以下「外部委託」という。)するに際しては、施行規則第10条の5の規定に基づく措置を構築し、外部委託に伴う様々なリスクを的確に管理し、業務の適切な運営を確保する必要がある。
貸金業者の監督に当たっては、例えば、以下の点に留意するものとする。
(1)主な着眼点
①委託先の選定基準や外部委託リスクが顕在化したときの対応などを規定した社内規則等を定め、役職員が社内規則等に基づき適切な取扱いを行うよう、社内研修等により周知徹底を図っているか。
②委託先における法令等遵守態勢の整備について、必要な指示を行うなど、適切な措置が確保されているか。また、外部委託を行うことによって、検査や報告命令、記録の提出など監督当局に対する義務の履行等を妨げないような措置が講じられているか。
③委託契約によっても当該貸金業者と資金需要者等との間の権利義務関係に変更がなく、資金需要者等に対しては、当該貸金業者自身が業務を行ったものと同様の権利が確保されていることが明らかとなっているか。
(注)  外部委託には、形式上、外部委託契約が結ばれていなくともその実態において外部委託と同視しうる場合や当該外部委託された業務等が海外で行われる場合も含む。
④委託業務に関して契約どおりサービスの提供が受けられない場合、貸金業者は顧客利便に支障が生じることを未然に防止するための態勢を整備しているか。
⑤委託先における目的外使用の禁止も含めて顧客等に関する情報管理が整備されており、委託先に守秘義務が課せられているか。
⑥個人である資金需要者等に関する情報の取扱いを委託する場合には、当該委託先の監督について、当該情報の漏えい、滅失又はき損の防止を図るために必要かつ適切な措置として、保護法ガイドライン第12条の規定に基づく措置及び実務指針 III の規定に基づく措置が講じられているか。
⑦外部委託先の管理について、責任部署を明確化し、外部委託先における業務の実施状況を定期的又は必要に応じてモニタリングする等、外部委託先において顧客等に関する情報管理が適切に行われていることを確認しているか。
⑧外部委託先において漏えい事故等が発生した場合に、適切な対応がなされ、速やかに委託元に報告される体制になっていることを確認しているか。
⑨外部委託先による顧客等に関する情報へのアクセス権限について、委託業務の内容に応じて必要な範囲内に制限しているか。 その上で、外部委託先においてアクセス権限が付与される役職員及びその権限の範囲が特定されていることを確認しているか。
さらに、アクセス権限を付与された本人以外が当該権限を使用すること等を防止するため、外部委託先において定期的又は随時に、利用状況の確認(権限が付与された本人と実際の利用者との突合を含む。)が行われている等、アクセス管理の徹底が図られていることを確認しているか。
⑩二段階以上の委託が行われた場合には、外部委託先が再委託先等の事業者に対して十分な監督を行っているかについて確認しているか。また、必要に応じ、再委託先等の事業者に対して貸金業者自身による直接の監督を行っているか。
⑪委託業務に関する苦情等について、資金需要者等から委託元である貸金業者への直接の連絡体制を設けるなど適切な苦情相談態勢が整備されているか。
(2)監督手法・対応
検査の指摘事項に対するフォローアップや、苦情等に係る報告徴収等により、貸金業者の貸金業務の外部委託に係る内部管理態勢、貸金業者の外部委託先の業務運営態勢若しくは業務運営の適切性に問題があると認められる場合には、貸金業者や外部委託先に対する深度あるヒアリングを実施し、必要に応じて法第24条の6の10に基づき報告書を徴収することにより、貸金業者における自主的な業務改善状況を把握することとする。
更に、資金需要者等の利益の保護の観点から重大な問題があると認められるときには、貸金業者に対して、法第24条の6の3の規定に基づく業務改善命令を発出することとする。また、重大・悪質な法令違反行為が認められるときには、法第24条の6の4に基づく業務停止命令等の発出を検討するものとする(行政処分を行う際に留意する事項は III -5-1による)。
※ヒアリングは、委託者である貸金業者を通じて事実関係等を把握することを基本とするが、事案の緊急性や重大性等を踏まえ、必要に応じ、外部委託先からのヒアリングを並行して行うことを検討することとする。
※また、外部委託先に対してヒアリングを実施するに際しては、必要に応じ、委託者である貸金業者の同席を求めるものとする。

貸金業法(変更の届出)第8条

貸金業者は、第四条第一項各号(第五号及び第七号を除く。)に掲げる事項に変更があつたときは、その日から二週間以内に、同項第五号又は第七号に掲げる事項を変更しようとするとき(前条各号のいずれかに該当することとなる場合を除く)は、あらかじめ、その旨をその登録をした内閣総理大臣又は都道府県知事に届け出なければならない。
2  内閣総理大臣又は都道府県知事は、前項の規定による届出を受理したときは、当該届出に係る事項が第六条第一項第八号から第十号まで、第十三号又は第十六号のいずれかに該当する場合を除き、届出があつた事項を貸金業者登録簿に登録しなければならない。
3  第一項の規定による届出には、内閣府令で定める書類を添付しなければならない。

貸金業法施行規則(登録の申請)第1条の5

法第三条第一項 の規定による金融庁長官の登録を受けようとする者は、別紙様式第一号により作成した法第四条第一項 の登録申請書(次項及び第四条第三項第二号において「登録申請書」という。)に、同条第二項の規定による添付書類(次項において「添付書類」という。)一部を添付して、その者の主たる営業所又は事務所(以下「営業所等」という。)の所在地を管轄する財務局長(当該所在地が福岡財務支局の管轄区域内にある場合にあつては、福岡財務支局長)に提出しなければならない。
2  法第三条第一項 の規定による都道府県知事の登録を受けようとする者は、登録申請書に、当該都道府県知事が定める部数の当該登録申請書の副本及び添付書類を添付して、当該都道府県知事に提出しなければならない。
3  第一項に規定する「営業所又は事務所」とは、貸金業者又はその代理人が一定の場所で貸付けに関する業務(法第二条第一項 に規定する貸付けの契約の締結並びに貸付けの契約に基づく金銭の交付及び債権の回収をいう。以下同じ。)の全部又は一部を継続して営む施設又は設備(自動契約受付機、現金自動設備(現金自動支払機及び現金自動受払機をいう。以下同じ。)及び代理店を含む。)をいう。ただし、現金自動設備にあつては、営業所等(現金自動設備を除く。)の同一敷地内(隣接地を含む。)に設置されたものを除く。
4  前項に規定する「代理店」とは、貸金業者の委任を受けて、当該貸金業者のために貸付けに関する業務の全部又は一部を代理した者が、当該業務を営む施設又は設備(銀行法 (昭和五十六年法律第五十九号)第二条第一項 に規定する銀行、長期信用銀行法 (昭和二十七年法律第百八十七号)第二条 に規定する長期信用銀行、協同組織金融機関の優先出資に関する法律 (平成五年法律第四十四号)第二条第一項 に規定する協同組織金融機関及び株式会社商工組合中央金庫の営業所又は事務所(現金自動設備に限る。)を除く。)をいう。
5  第一項に規定する「主たる営業所等」とは、法人にあつては登記簿上の本店又は事務所をいい、人格のない社団又は財団及び個人にあつては貸金業の業務全般を統括する施設をいう。

貸金業法施行規則(登録申請書に記載する連絡先等)第3条の2

 法第四条第一項第七号 に規定する内閣府令で定めるものは、次に掲げるものとする。
一  電話番号(場所を特定するもの並びに当該場所を特定するものに係る着信課金サービス及び統一番号サービスに係るものに限る。)
二  ホームページアドレス(使用する自動公衆送信装置(著作権法 (昭和四十五年法律第四十八号)第二条第一項第九号の五 イに規定する自動公衆送信装置をいう。)のうちその用に供する部分をインターネットにおいて識別するための文字、番号、記号その他の符号又はこれらの結合であつて、情報の提供を受ける者がその使用に係る電子計算機に入力することによつて当該情報の内容を閲覧することができるものをいう。以下同じ。)
三  電子メールアドレス(電子メールの利用者を識別するための文字、番号、記号その他の符号をいう。以下同じ。)
2  前項第二号又は第三号に掲げるものを法第四条第一項第七号 に掲げる事項として同項 の登録申請書に記載する場合には、前項第一号に掲げるもののいずれかを併せて記載しなければならない。

以上、貸金業の業務の外部委託と監督指針について解説しました。

ご覧頂きありがとうございます。

公開日:2016年7月9日

制作:落合 正

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